シグナレス/signaless signaless

O編集部員日記 - 2012年6月19日(火)

休日なれど、大雨のため、終日家で過ごす。


DVDで『レザボア・ドッグス』を観る。再見。
タランティーノのデビュー作だが、やはり面白かった。まずキャスティングがシブい。スティーヴ・ブシェーミ、ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、タランティーノ本人・・。そして、アクション映画ではあるんだけど、アクションにも増して、会話が面白い。だらだらした与太話や、激昂しての喧々諤々のうちに、それぞれの個性が際立ってくる。加えて、音楽がかっこいい。レトロかつノリがよくて。これらは後の『パルプフィクション』や『デス・プルーフ』などにも言えること。


DVDで『バーレスク』を観る。
正統的娯楽作という印象。「女の子がダンスしてる場面があればその映画は八十点プラス、しかも集団だったらもうそれだけで九十点」と書いていたのは作家の柴崎友香だが、ぼくは踊りというのはさほど好きでもなく、ミュージカル映画などはいまいち苦手なほうだ。が、そんなぼくでもこの映画はけっこう面白かった。ヒロインはじめ女性たちのエロティックかつパワフルなダンスは楽しかった。話自体はお約束の展開なんだけど、爽快な映画。


水上滝太郎『銀座復興』(岩波文庫)読了。
こないだ読んだこの人の『大阪の宿』がとてもよかったので、もっとこの人のものを読んでみようと思ったしだい。『大阪の宿』の姉妹編として『大阪』というのがあるらしいのだが、ネットで検索してみたところ文庫本の割には古書価が高めだったので躊躇。最近発売されたこちらの中短編集を読むことにした。収録作四作のうち三作は、関東大震災を題材にしている。この度の3・11東日本大震災を意識しての発売らしい。個人的には『大阪の宿』ほど魅せられなかったのだけど、震災後の銀座で復興を目指す人々や、鎌倉で震災に合い九死に一生を得る人々の姿を描く筆致は真摯なもので、やはり確実に作品世界に引き入れられる。


というわけで、ゆっくり映画と本を楽しめたのはよかったんだが、昼も夜も近所のローソンのジャンクなものばかり食ったせいか、終日腹具合がおかしく、夜からはなんだか体がダルくなってきたので、いつもより早めに就寝。(O)


M編集部員日記 - 2012年6月17日(日)

チケットをいただいていた京都市美術館での『井田照一 版の思考・間の思索』を観に行く。膨大ともいえる作品の量、そして版画、造形、陶器等様々なスタイルによる作品群に圧倒される。今日は観客も少なめで、ちょうど良い感じだった。


乾くるみ『蒼林堂古書店へようこそ』(徳間文庫)読了。ミステリ専門の古書店を舞台にした連作ミステリ。謎そのものもそうだし、その解答もミステリとしてはどちらかというとゆるい感じで、読みやすかったのだけれど、若干物足りなさが残った。


今週ようやく巻頭エッセイが更新された。内輪をほめるのも何なのだけれど、結構面白く読んだ。この調子でどんどんHPを充実させよう、というのはやはり無理か?(M)


M編集部員日記 - 2012年6月3日(日)

MOVIX京都で中村義洋監督・脚本『ポテチ』を観る。伊坂幸太郎の小説を映画化した作品。約70分程度と短めの作品だったが、悪くない。浜田岳のキャラクターが何とも言えず憎めないし、結局のところ「いい話」であるところが、今の自分にとっては好ましく感じられた。


この作品の中で大森南朋演じる黒澤は人の気持ちが分からない人物という設定だが、私自身もどちらかというと、人の気持ちが分からない人間だと思う。だからこそ、言葉というものが大切だと思う。心が通じ合っていれば、話さなくても分かるということもあるのかもしれないけれど、私には話さないと分からないことも多い。そう思って、こちらが言葉を投げ掛けても、返ってこないこともある。話したくない、話すのが面倒だ、もしくはこちらの言葉がきちんと届いていない、色んな理由があるだろうと思う。そんなとき、どうすべきなのか。自分がどうしても話をすべきと思うなら、粘り強くやり続けるということしかないのだろう。それでも、どうしても答えが返ってこなければどうすべきか、今のところ答えがない。(M)


M編集部員日記 - 2012年5月26日(土)

時間があったので、デパートの屋上へ行ってみる。昔のように子ども向けの遊具があるわけではなく、ただベンチが置かれているだけで、周りのフェンスも昔より高くなっているような気がした。それでも、夕暮れの風に吹かれていると心地よかった。


京都シネマでアキ・カウリスマキ監督・脚本・製作『ル・アーヴルの靴みがき』を観る。これまでのカウリスマキ監督の作品とは少し作風が変わったという印象。冒頭の駅でのシーンや夫婦の会話はまさにカウリスマキ監督らしい雰囲気があるのだが、少しずつ別の世界へと導かれていく。舞台がフランスであるということもそうだし、移民問題という明確なテーマ設定もこれまでのカウリスマキ監督の作品にはなかったものだろう。しかし、全体としてはやはりカウリスマキ監督らしい作品になっているのも間違いない。そして、ラストについては賛否両論あるだろうが、今の私にはこれで良かったと思えた。(M)


M編集部員日記 - 2012年5月20日(日)

京都シネマでアスガー・ファルハディ監督・脚本『別離』を観る。イラン映画。夫婦の離婚問題をきっかけに巻き起こる事件を描いた作品。家族、現代のイラン社会、宗教等様々な問題を取扱った作品であり、少しミステリ的要素も含んでいるのだが、それが一つにまとまり破綻していない。完成度が高い作品だといえる。しかし、逆にその完成度の高さ、隙のなさがこの作品の欠点かもしれない。そして、フィルム上映ではないことが大変残念だった。


この作品を観て映画の枠組みもしくは、映画の文法とでもいうべきものを踏襲する作品こそ映画なのだと改めて感じた。最近の特に日本のインディーズ映画は、その点が少し欠けているのではないだろうか。前衛というものもやはり基本があっての話であり、その基本は単に「映像」の基本ということではなくて、あくまでも「映画」の基本なのだろうと思う。(M)


M編集部員日記 - 2012年5月4日(金)

みなみ会館でジャック・オディアール監督『預言者』を観る。フランスの刑務所を舞台とした作品。行き詰るような展開だが、ラストでは希望を感じさせられた。重厚で緊張感のある映画らしい映画だった。(M)


M編集部員日記 - 2012年4月21日(土)

先日ある方に疲れているときに一番良いのは銭湯だということを言われて、銭湯に行く。確かに気持ち良い。お代410円。いつからこんな値段になったのだろう。
その後、みなみ会館へ。今年も会員を更新。ささいなことかもしれないけれど、幸せなことだと思う。ケネス・アンガー作品集を観る。(M)


M編集部員日記 - 2012年3月4日(日)

書店で松本大洋『Sunny』2巻を見つけたので購入。
夜、H氏と飲みに行く。
二人で飲むのは久しぶり。おいしい酒と肴でついつい酒量が増えてしまう。
かなり酔っぱらっていたけれど、H氏は無事に帰宅できただろうか。(M)


M編集部員日記 - 2012年3月3日(土)

中信美術館へ「小牧源太郎展」を観に行く。この人の絵は10年以上前に一度観たことがある。今回、久しぶりに観てみてもやはり面白い。シュールレアリズムという言葉で括られる作風だが、不気味さとユーモラスなものが一体となっている、そんな感じ。
夜、みなみ会館で真利子哲也監督『NINIFUNI』を観る。色んな意味でちょっとついて行けず。(M)



M編集部員日記 - 2012年2月29日(水)

Wさんと梅田芸術劇場へハナレグミのライブを観に行く。1曲目の「光と影」から素晴らしく引き込まれてしまった。そして楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
ライブの後、梅田のガード下のバーで軽く飲む。ウイスキー1杯、400円前後、料理も300円前後と安くて良い雰囲気の店だった。(M)


O編集部員日記 - 2012年2月27日(月)

休日。家を出しなに、いつものように玄関のドアのノブのボタンをポチッと押してバタンと閉めたその瞬間、財布を持っていないことに気付く。財布を取ろうにも、玄関のカギはその財布に入っている。母は先に出かけていて家の中には誰もいない。家の中に入れなくなってしまったのだった。家の裏にまわってどこか窓が開いてないか調べるがちゃんと閉まっているし、裏手の嵌めこみの窓を外そうとガタガタやるがやっぱり無理。通りかかった隣の工事のおじさんが不審な目でこちらを見ている。仕方がないので、隣の町内の親戚の家に行って三千円借りてから、出かけた。なにやってんだか。


自転車に乗って、鈴虫寺方面へ向かう。久しぶりに自転車散歩がしたくなったのは、先日、泉麻人の『東京自転車日記』という本を読んだから(すぐ影響されるなあ。「仮面ライダー」を観た子供が、仮面ライダーごっこをやりたがるようなものか)。気が晴れたけど、自転車散歩をするには、この時期はやっぱりちょっと寒かった。なにしろ今日は雪がちらつく天気だったので。すっかり体が冷え切ってしまい、早めに引きあげることに。


本当はこの後は家のなかで暖かく過ごしたかったのだが(隣の工事の音も今日は大したことなかったし)、なにしろ家に入れないので、自転車だけ戻して、街へ出かけることにする。四条のドトールで一時間半ほど読書。自転車散歩の途中で食堂にも入ったので、残金は千数百円。これだけの金しか持たず繁華街を歩くと、さすがにちょっと心細いものだな。ジュンク堂でいろいろ見る。文庫一冊なら買えるな、と思ったけど、結局今日は本は買わず。どうせなら五千円か一万円くらい借りればよかったなと思いつつ、阪急烏丸駅の公衆電話から家に電話してみるが(ケータイも家に置いてきた)、母はまだ帰っていないらしく、出ない。仕方がないので、駅のベンチでまたしばらく本を読んで過ごす。四十分後、再度電話すると今度は母が出たので、電車に乗り、四条大宮のスーパーで晩飯を買ってから、帰宅。残金百二十円也。


沼田元気『京都ス−ベニイル手帖』(白夜書房)をパラパラ眺めていたら、モデルさんに見覚えあり。以前、出町柳の名曲喫茶柳月堂に入った時、コーヒーをしずしず運んできたウエイトレスさんではないか。徳田妃美さんというモデルさんで、雑誌『オリーブ』などでも活躍しておられたそう。ちょっと眠そうな目をしたアンニュイでフシギな雰囲気の人で、なんだか戸川純みたいなウエイトレスさんだなあと思ったものだった。


エーリヒ・ケストナー『動物会議』(岩波書店)読了。
「町家古本はんのき」さんで買ったったもので、「ケストナー少年文学全集」の一冊。人間の愚かさを批判する反骨精神はありながら、さっぱりとしていて朗らかな味わい。大人が読んでも面白い。


「親愛な子どもたちよ、何かわからないことがあったら、みなさんのおとうさん、おかあさんにききなさい! 親愛なおとうさん、おかあさんたちよ、何かわからないことがあったら、みなさんのお子さんにききなさい!」(ケストナー)(O)


O編集部員日記 - 2012年2月6日(月)

昨夜は、弟がギターをつとめるバンド「志摩三兄弟」のライブを観に行った。四条通柳馬場の「ミューズ」。志摩三兄弟のライブは何度か観ているけれど、今回もなかなかの迫力で、三十路バンドの底力を感じさせてくれた。ついでにその後の椎名純平も観ていく。


今日は、阪急に乗って梅田へ出かける。曇天だし、読みさしの本はたまり気味だしで、あまりお出かけ気分でもなかったのだが、先週から隣の銀行のビルをぶっ潰す大工事が始まっており、うるさくて家にはおれないのだ。


丸善ジュンク堂へ。ダニエル・クロウズ『ゴーストワールド』、平川克美『小商いのすすめ』を購入。前者は映画『ゴーストワールド』の原作マンガ。好きなんですよ、この映画。ブスかわいいソーラ・バーチがいい。後者にはこんなシブい言葉が。「商店街に帽子屋があった時代とは、おとなというものが存在していた時代である。親子がため口をきくような時代からは想像もできない距離が、おとなとこどもの間にあった。」小津や成瀬の映画を観ていて感じるのもこのこと。


往復の車中では、笙野頼子『徹底抗戦!文士の森』を読んでいた。大塚英志批判が尋常でないしつこさ。(O)


O編集部員日記 - 2012年1月30日(月)

昨夜はDVDで『王立宇宙軍 オネアミスの翼』と『異人たちとの夏』を見直した。前者はガイナックスの名作アニメ。ぼくはアニメファンと言えるほどたくさんアニメを見ているわけではないし、とりたててガイナックスのファンというわけでもないのだが、この作品は不思議と自分の感覚にピッタリくるものがあり、何度も見ている。今回あらためて感銘を受けた。後者は大林宣彦監督作品で、やはり面白かった。親との別れのシーンは涙なくしては観れない。大詰め、空中浮遊した恋人の体から血しぶきがブシューと飛びまくり、主人公の風間杜夫が白髪でシワだらけの爺さんと化してしまうシーン(って、どんなシーンなんだ)は、「あんたらやり過ぎ・・」という気もしなくはないんだが、いや、このエグ味こそ大林映画の味わいとも言えよう。


今日はツタヤ太秦店に行ったあと、バスで四条烏丸へ。四条河原町のマルイの6Fにある書店フタバプラスで、『KWADE道の手帖 吉田健一』、牧村健一郎『獅子文六の二つの昭和』を購入。そのあと、ジュンク堂BAL店にも行く。ここで、うちの店で二、三度買ってくれたことがあり話したこともあるお客さんを見かけた。なぜかサッと本棚の陰に身を隠す私。佐々木敦『未知との遭遇』を購入。帰宅すると、ネットで注文した村上知彦『日々の本』が届いていた。(0)


M編集部員日記 - 2012年1月28日(土)

寺町三条のカニ道楽にて「シグナレス」12号の打ち上げ兼新年会。今回は、久しぶりにメンバー全員がそろう。カニ尽くしということでカニの刺身から鍋までひたすらカニを食べる。それにしても、やはりカニを食べるのは面倒だと実感。


2次会はアンデパンダンへ。ウィスキーなど軽く飲む。


今日の会の中で、日々の暮らしの中で「自分はいったい何故こんなことをしているのか」という思いにとらわれることがあるというような話があったけれど、それは自分も感じることだし、今日のようにお酒を飲んで楽しい思いをした翌朝の言葉にできないようながっかりした感じも、それもまた生きているということなのだと思う。


次号の特集は「ぐりとぐら」だけれど、Sさんの家には同じ絵本が3冊あるそうだ。兄妹3人のためのもので、今も残されてるとのこと。本当の豊かさ、ゆとりというのはこういうことなのだろうし、Sさんの今の性格もこういうところから醸成されたのかと思うとうらやましい。(M)



M編集部員日記 - 2012年1月21日(土)

冷たい冬の雨の降る一日。


西院にある西新道錦会商店街の喫茶店でこ姉妹舎での滝本晃司のライブへ行く。ここでのライブは一昨年の夏以来。その時も雨で、ひどい夕立ちで濡れた記憶がある。


今回は「ぽこぽこ」、「ここ」といった新曲を始めとしてあまり聴いたことのない曲が多かったような気がする。そして、途中3曲、東京のライブで共演したという古庭千尋さんとの2人での演奏があったのだけれど、それが結構良かった。即席といった感じは否めなかったのだけれど、今回演奏された「海にうつる月」などたま時代の曲はギターの弾き語りより、やはり他の楽器が入ったほうが美しい本来の曲の良さが引き出されているような気がした。その他、「こわれた」はライブでは初めて聴いたような気がするが、これもおもしろかった。


上田早夕里『リリエンタールの末裔』(ハヤカワ文庫)読了。この人の本は以前『魚舟・獣舟』(光文社文庫)を読んだけれどあまり印象に残っていなかった。しかし、今回の作品集は非常に良かった。SF短編集として手堅く、そしてちょっとリリカルな感じが自分好みだと思う。


綾辻行人『奇面館の殺人』(講談社ノベルズ)読み始める。待望の館シリーズの新作。ゆっくり読みたいと思う。(M)



M編集部員日記 - 2012年1月14日(土)

12号配付のため大阪へ。ちょうちょぼっことcaloへ行ったが、caloは臨時休業だった。
夜、みなみ会館で松井良彦監督『追悼のざわめき』を観る。1983年に撮影された伝説の1本。この映画には我々が日常においてあえて目を背けているグロテスクなものがつまっている。上映後松井監督の舞台挨拶。監督曰く、脚本を読んだ寺山修二が「この映画が完成すれば事件だ」と言ったということなのだが、確かにこの映画が上映されるというのは普通に考えればちょっと凄いことのような気がする。まだ、1983年なら撮影可能であったのかもしれないが、今ならこの内容は撮影できないかもしれない。(M)


M編集部員日記 - 2012年1月8日(日)

尾崎一雄『ペンの散歩』読了。年末にガケ書房で古書として購入したもの。年が明けてから少しずつ読んでいたのだけれど、晩年の身辺雑記的な随筆や講演録、対談を集めたもので面白かった。この本に収めれられた文章は昭和50年前後のものだが、壇一雄、中谷孝雄、永井龍男といった人々が登場している。それが私には少し不思議な感じがした。というのも、そういった人々は私の中ではもうかなり過去の人といった印象があるためで、戦後30年を経過した昭和の後半にまだ作家として作品を書いていたということがうまく結びつかない。しかし、一方でもう既に平成も24年という年を迎えるのだし、とするならその時代でさえも充分昔の話なのかもしれない。この本の中で尾崎一雄が「明治はむかしとなりにけり」と記しているが、「昭和もむかしとなりにけり」といったところだろうか。


ところで、この本の見返しには誰のものか不明のサインが記されている。勿論、著者の尾崎一雄のものではない。何とかかれているのか、それすら分からない。


少し遅くなりましたが、今年も「シグナレス」をよろしくお願いします。
いつも年の初めに思うのは、何か面白ことができればということです。今年は蒼幻舎として「シグナレス」とは別に本が出せれば良いなと、何の具体的な案もないのですが、考えてます。(M)



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